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2015.08.02 Sunday

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2009.10.21 Wednesday

椅子がこわい

 


著者は想像を絶する腰痛に苦しんだ。ベッドで目覚めた直後からの激痛、柔らかい椅子にはとうてい座れない痛み、そこで立っていようとするのだが、何かに凭れないといられない不安、そして何よりも眠りをさますほどの痛み。
 こうなるとレストランにも劇場にも行けないし、むろん電車にも飛行機にも乗れないから、旅行はできない。むろん病院に行った。それもあらゆる治療にかかった。整形外科、鍼灸医、産婦人科、温泉療法。さらに手かざし療法から祈祷をうけるまで、まあ、よくぞここまで試みたとおもえるほどに、著者はありとあらゆる手を打っている。ところが、何をやってもなかなか治らない。
 かくして著者は発病後2年ほどして、ほとんど仕事ができなくなり、自分の病が不治のものとおもうようになったばかりか、このままではこの得体の知れぬ病気で死ぬか、自殺するか、余病を併発して死ぬか以外はないと思いはじめる。ようするに死にとりつかれてしまったのだ。

こうして著者は熱海で絶食療法をうけ、平木医師に最後通告をされる。「あなたの大部分を占めていた夏樹静子の存在に病気の大もとの原因があると思います」。
 著者は答える、「元気になれるなら夏樹を捨ててもいいくらいです」。が、平木医師は即座に言ってのけたのである、「元気になれるなら、といった取引はありえない。無条件で夏樹をどうするか、自分なりの結論が出たら私に話して下さい」。
 そんな話をされてもやはり激痛は去らない日々が続くのだが、著者は自分では結論が出せないでいる。平木医師はさらに著者に迫った。「では私の結論を言います。夏樹静子を捨てなさい。葬式を出しなさい」。理由はこうである。あなたの腰痛は“夏樹静子”という存在にまつわる潜在意識が勝手につくりだした“幻の病気”にほかならない!
...
 この宣告こそ、作家であって知識人でもある著者にはまったく容認できないものだった。しかも、著者はそんな推測がいちばんバカバカしいものだと何度もくりかえして、この3年間にわたって拒否しつづけたものだった。
 しかし平木医師はまったく頑として譲らない。結局、根負けしたようにして著者は絶食をつづけ、夏樹静子との決別を決意する。
 その直後である。激痛が去る。嘘のように消えたのである。そして二度と腰痛がおこらなくなったのである。
 このことはいまなお著者自身が信じられないことであるという。それはそうだろう、あれほどの物理的な痛みがただの自分がつくりだした心の問題であったということなど、とうてい信じられはしまい。
 しかし、著者は心身症にすぎなかったのだった。本書はそのことを劇的に、しかも説得力をもって告げている。森田療法が勝ったのである。
(松岡正剛の千夜千冊 夏樹静子『椅子がこわい』
http://www.isis.ne.jp/mnn/senya/senya0146.html)
--------

心身症は、多岐にわたる症状の神経症の総称
であるが、どこも悪くないのに症状が現れる
病気を身体性表現障害と呼ぶ。

つまりは、病気でないかと思い込んで具合
が悪くなるのである。
夏樹さんの場合には、腰が悪いと思って
痛くなったようであるが、ぴたりと治った
というのもすごい。

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