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2015.08.02 Sunday

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2009.04.24 Friday

転落する人生

 「嫌われ松子の一生」をご紹介したい。

中谷美紀さん演じる「松子」の転落流転する、悲惨な人生に総天然色のミュージカル仕立ての演出を所々にしこんだコメディ映画である。

松子は教師になる。修学旅行の下見先で、校長からセクハラ。修学旅行では教え子をかばうばかりに窃盗事件犯。教師を引責辞任。作家志望の「劇団ひとり」との同棲生活で暴力を受ける日々。中州のソープナンバーワン。同棲中のヒモを殺害。逃走。自殺ぎわを救われた「荒川良々」と生活。つかの間、逮捕、服役。学校でかばった教え子がやくざになって、再会。逃走の日々。とここまで書いてきても、指が痛くなるだけで救いのない、ちょとうそっぽいストリーである。ところが中谷美紀さんの艶めかしさが、うそっぽい話と演出に奇妙なリアリティを与える。こんな実話もあったのかもしれないと思わせる。
この映画の過剰な演出とバランスをとっている中谷美紀さんの生々しい表情というのも、化粧品のコマーシャルで確立するまでは、世の中の認知されるところではないし、彼女が坂本龍一氏の秘蔵っ子の歌手であったことなどご存じない方も多いことと思う。

...

タイトルには、”嫌われ”松子、と書かれているし、キャッチコピーでは、”不器用な”性格のせい、という。転落する人生は、そういうことはあまり関係ないのではないかと思う。世の中で実際に起きた有名な事件をつなぎ合わせれば、このくらいの話にはなりそうな気がする。

実のところ、この作品は、かなり原作に忠実に作られているものの、原作以上に成功を収めているのは、その過剰なコメディミュージカル仕立てにあると思う。悲惨な人生が大爆笑のコメディのお芝居へと転換される中で、視聴者は、いつのまにか、松子は一生の間、ずっとお芝居を演じていたにすぎないような気にされてしまう。その結果として、松子の一生が救われるし、視聴者も救われる。近松の「虚実皮膜論」とはかくあるものだろうか。

村上春樹さんの小説の中の引用を信用するならば、古代ギリシアのエウリピデスの悲劇では、収拾のつかない混乱状態の最後には、必ず神様がやってきて交通整理をするのだという。

こんな神様の降臨のない現代だからこそ、中島監督の喜劇仕立てに、救いがあると思うのだ。人生ならぬ階段を転落して亡くなった鬼才中島らも氏がお笑いにこだわったのも少しわかるような気がした。

                2006 中島哲也 嫌われ松子の一生
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